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『イン・ザ・メガチャーチ』感想レビュー|推し活の怖さを風刺的に描いた本屋大賞受賞作【ネタバレなし】

巨大な教会の内部でペンライトの光が揺れる、熱狂と静けさが同居する風刺的イラスト

巨大な教会の内部でペンライトの光が揺れる、熱狂と静けさが同居する風刺的イラスト

朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』を読み終えました。推し活とファンダムの熱狂を正面から扱った長編で、2026年の第23回本屋大賞受賞作です。読み終えたあと、しばらく本を閉じたまま動けませんでした。ネタバレなしで感想をまとめます。

『イン・ザ・メガチャーチ』はどんな小説?(ネタバレなし)

日本経済新聞夕刊での連載を単行本化した、400ページを超える長編です(日経BP・日本経済新聞出版、2025年9月刊)。タイトルの「メガチャーチ」は数千人規模を集める巨大教会のこと。信仰の場になぞらえて、熱狂を加速させる社会の仕組みが描かれます。

物語を動かすのは3つの視点。アイドルグループの運営に関わる男、孤独を埋めるように推し活へのめり込む大学生、ある報道で熱狂の輪から外れた女性。仕掛ける側・のめり込む側・降りた側の線が、少しずつ近づいていきます。本屋大賞では452点を集めて受賞、50万部を超えるベストセラーです(2026年4月時点)。

総評は★5。「今どこかで起きている」感触が消えない

フィクションのはずなのに、読んでいる間ずっと「これ、実際にどこかで起きているのでは」という感覚が消えませんでした。推し活という身近な題材を、茶化しもせず断罪もしない。悪人を用意して読者を安心させる逃げ道がないんです。

そして構成。熱狂に呑まれて狂っていく人たちが、それぞれ違う入り口から同じ場所へ向かい、その線が交差していきます。推す側、作る側、降りた側、どの人物にも自分と重なる瞬間がある。安全な観客席が用意されていないのが、この小説のいちばん怖いところでした。

どんな人におすすめか

ファンダムの小説ですが、「推し活をしていない人」にこそ勧めたい一冊です。

  • 好みが分かれるモノを作っている人 — 支持されることの気持ちよさと危うさが作り手側からも描かれ、他人事として読めません
  • サービス業・接客業の人 — お客さんの「好き」と向き合う仕事の、あの場面と一致する瞬間があります
  • 推し活をしている人・していた人 — 耳が痛いけれど、自分の熱を客観視するきっかけになります

逆に、明快な答えやカタルシスを求めると肩透かしかもしれません。考える余白を楽しめる人向けです。

まとめ:熱狂の時代を生きる全員に刺さる一冊

読後にスッキリする小説ではありません。閉じたあとに「自分はどの登場人物に近いんだろう」と考え込んでしまう。この後味の長さこそが魅力で、本屋大賞受賞も納得の★5です。単行本のほか電子版もあります。

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