
ショップで新しいスマホを見ていると、ほぼ必ずこう言われます。「2年後に返していただければ、残りのお支払いは不要になります」。
月々の負担は確かに軽くなる。でも、返した端末はキャリアのものになる。そう聞くと「これってリースでは?」と思うし、同時に「返してもらった中古スマホで、会社の側は元が取れているの?」という疑問も湧いてきます。むしろキャリアが損しているようにさえ見える。
結論から書くと、キャリアが損をしにくいように設計されていて、得をするかどうかは利用者側の条件で真っ二つに割れます。そしてその分岐点は、たったひとつの引き算で判定できます。
この記事では、各社の公式情報をもとに仕組みを分解し、「誰が得をして、誰が損をするのか」を数字で出していきます。
「2年で返却」はリースなのか? まず正体を押さえる

リースに似ていますが、正確には違います。正体は自動車の「残価設定ローン(残クレ)」とまったく同じ構造です。
KDDIの公式発表が、この仕組みをいちばん端的に説明しています。「スマホトクするプログラム+」は、24回払いを条件に、購入機種の2年後の買い取り価格を残価(最終回支払分)として設定し、本体価格から残価を除くことで23回の支払いまでは低廉な割賦金額となるプログラムです。
ドコモの「いつでもカエドキプログラム」も同じ考え方で、1〜23回目は「支払総額から残価を差し引いた額」を分割し、24回目に残価を支払う方式。23か月目までに端末を返却すれば、この24回目の残価が不要になります。
つまり流れはこうです。
- 端末価格を「23回で払う部分」と「最後にドンと残る部分(=残価)」に分ける
- 利用者は23回ぶんだけ払う
- 2年後、端末を返せば残価は払わなくていい
- 返さないなら、残価を支払って自分のものにする
ここで押さえておきたいのが、残価の金額を決めているのはキャリア自身だという点です。リースなら物件の市場価値に縛られますが、このプログラムでは「2年後にいくらで買い取るか」をキャリアが先に宣言し、その宣言どおりに回収します。ここが、あとで効いてきます。
なお、返却しなかった場合に端末が没収されるわけではありません。auの公式FAQでは、25か月目までに特典を利用しない場合「一定の審査の後、残価(=最終回支払分)を再度24回に分割」する、一括払いも選択可能、と説明されています。払えば普通に自分のものになります。
2026年に変わった最大のポイント:最大22,000円の「出口課金」
2026年に入って、このプログラムは重要な改定を受けました。返却するときにお金がかかるようになったのです。
| キャリア | プログラム名 | 返却時の利用料 | 開始日 | 免除条件 |
|---|---|---|---|---|
| ドコモ | いつでもカエドキプログラム | 最大22,000円 | 2026年3月5日〜 | ドコモで買替えおトク割(同社で買い替え) |
| au | スマホトクするプログラム+ | 最大22,000円 | 2026年2月26日〜 | au買替特典(同社で機種変更) |
| ソフトバンク | 新トクするサポート+ | 機種により0〜22,000円 | 先行実施 | 買替え応援割(同社で買い替え) |
| 楽天モバイル | 買い替え超トクプログラム | 3,300円(機種回収事務手数料) | – | 免除の仕組みなし |
出典: KDDI公式、ケータイ Watch、Selectra
重要なのは免除条件です。auの「au買替特典」は、特典利用と同時にauで指定機種へ機種変更すると特典利用料相当額(最大22,000円)が割引される仕組み。ドコモの「ドコモで買替えおトク割」も、ドコモで新端末を購入して31日以内に旧端末を回収に出せば免除されます。
裏を返すと、こうなります。
同じキャリアで買い替え続ける限り22,000円はかからない。他社に乗り換えるなら払ってください。
ケータイ Watchはこの改定を「実質的に、ドコモで端末を買い続ける動機が高くなる」「割引資源を先送りすることで初回購入のブースト効果を生み、新規・MNP顧客への割引原資を増やす仕組み」と分析しています。金額の大小以上に、出口に料金所を置いたという設計変更だと読むのが正確です。
なお「最大22,000円」であって、全機種が22,000円ではありません。ソフトバンクの例では iPhone 17 Pro が22,000円、AQUOS sense10 が11,000円、Pixel 9a は0円と、機種ごとに段差があります。契約前に、自分の機種の金額を必ず確認してください。
なぜキャリアは損しないのか — 回収経路は4つある

ここが本題です。「2年で返してもらって、キャリアは元が取れるのか」。答えは、回収経路が複数あるので、かなり取りこぼしにくいです。
経路1: 残価の金額を自分で決められる
前述のとおり、残価を設定するのはキャリアです。2年後の中古相場より低めに残価を置いておけば、返却された端末を相場で処分するだけで差益が出ます。逆に残価を高く見せれば「月々が安い」という訴求力が増す。この振れ幅をコントロールできること自体が、事業者側の優位です。
実際、ITmediaが取り上げた Galaxy S26 の例では、auはMNPだと残価8,900円、機種変更だと残価10万円と、同じ端末でも契約の入口によって残価が1万円以上変わるケースが報じられています。残価は端末の客観的価値というより、販売戦略の変数として使われているわけです。
経路2: 返却された端末を自社で再販できる
返却端末はスクラップになるのではなく、キャリア自身の認定中古品として売り直されます。
ドコモの「docomo Certified」は、ドコモで販売された製品のうち基本機能を点検し、バッテリー容量80%以上を保証、外装はクリーニング済み、30日間の保証付きで販売されるリユース品です。状態ランクはA+/A/Bの3段階で、SIMロックがないため他社でも使えます。
つまり「新品を売る → 2年後に回収する → 認定中古品として売る」という、1台で2回売るサイクルが回っている。これがリースとの最大の違いで、キャリアにとっては中古在庫の仕入れルートを自前で確保していることになります。
経路3: 2026年からの「出口課金」
前の章で見た最大22,000円です。他社へ流出するときにだけ発生するので、顧客が残れば追加コストなし、出ていくなら1台あたり最大2万円超を回収できる。どちらに転んでも事業者側にマイナスが出にくい構造になっています。
経路4: 返却されなければ、残価を満額回収できる
返却し忘れた・返したくなくなった場合は、残価が再分割されて支払いが続きます。この場合キャリアは端末代金を満額回収したうえ、端末は利用者の手元に残るので再販益こそ出ませんが、損はしません。
さらにその裏で、回線契約が2年単位で継続しやすくなるという効果もあります。端末の支払いサイクルと買い替えサイクルが同じキャリアに揃うほど、乗り換えのタイミングは作りにくくなります。
「会社が損しているように見える」のは、返却のシーンだけを切り取って見ているからです。 残価の設定権・再販ルート・出口課金・満額回収という4つの受け皿があるので、どのルートを通っても回収できる設計になっています。
高額な買い物を「月々いくら」に分解して見せる売り方は、スマホに限った話ではありません。家電でも同じ判断が必要になる場面はあります(参考: 忙しい人必見!ロボット掃除機の選び方とおすすめモデル)。
損得の分岐点は、ひとつの引き算で決まる

では利用者側はどう判断すればいいのか。難しく考える必要はなくて、比べるのは次の2つだけです。
A. 返却プログラムを使ったときの実質負担
本体価格 − 残価 + プログラム利用料(+ 故障時の追加費用)
B. 一括(または普通の分割)で買って、2年後に自分で売ったときの実質負担
本体価格 − 2年後の実売買取額
AとBを引き算して整理すると、判定条件はこうなります。
残価 > 2年後の実売買取額 + プログラム利用料
このとき、返却プログラムのほうが得。逆なら自分で売ったほうが得。
シンプルですが、ここに全部が詰まっています。同じキャリアで買い替えるなら利用料は0円なので「残価 > 買取額」かどうかだけ。他社へ乗り換えるなら右辺に22,000円が乗るので、ハードルは一気に上がります。
そして右辺の「2年後の実売買取額」を左右するのが、機種による値持ちの差です。
買取比較サイトのモバウルが2026年6月15日時点で107機種(iPhone 36・Android 41・iPad 30)を調査したところ、経過1〜2年の残価率は iPhoneが平均66.0%、Androidが平均51.3%。同世代でも iPhone 16 シリーズが65%以上を保つ一方、Pixel 9 シリーズは40%台前半にとどまり、20ポイント以上の開きがありました。上位は iPhone 17 Pro が82.9%、iPhone 17 が80.8%、iPhone 16 Pro Max が68.7%です。
さらに年数が経つほど差は広がり、新品購入から4年後の平均買取価格は iPhone が-66.43%、Androidが-81.11%というデータもあります。
ここから導ける経験則が、ひとつあります。
値持ちのいい機種(ハイエンドiPhoneなど)ほど、返却プログラムは相対的に不利になりやすい。値持ちの悪い機種ほど、返却プログラムは有利になりやすい。
直感と逆かもしれませんが、理屈は単純です。自分で売ったときに高く売れる端末を、決められた残価で手放すのはもったいない。逆に2年で半値以下になる端末なら、あらかじめ高めの残価を約束してもらえるプログラムのほうが有利になります。
モデルケースで計算してみる
数字を入れてみます。以下は仕組みを理解するための仮の数値で、実在する特定機種の価格ではありません。 ご自身の機種の本体価格・残価・利用料に置き換えて使ってください。
前提: 本体価格 180,000円 / 残価 80,000円 / プログラム利用料 22,000円(他社乗り換え時)
| パターン | 計算 | 実質負担 |
|---|---|---|
| ① 返却+同じキャリアで買い替え | 180,000 − 80,000 + 0 | 100,000円 |
| ② 返却+他社へ乗り換え | 180,000 − 80,000 + 22,000 | 122,000円 |
| ③ 買って2年後に売る(iPhone想定・残価率66%) | 180,000 − 118,800 | 61,200円 |
| ④ 買って2年後に売る(Android想定・残価率51.3%) | 180,000 − 92,340 | 87,660円 |
この設定だと、自分で売ったほうがどちらの機種でも得という結果になります。①と③の差は38,800円、①と④の差でも12,340円。残価80,000円は本体価格の44.4%で、実売の買取率(66%/51.3%)を下回っているためです。
ではキャリアが残価を厚めに設定した場合はどうか。残価を100,000円に変えてみます。
| パターン | 計算 | 実質負担 |
|---|---|---|
| ①’ 返却+同じキャリアで買い替え | 180,000 − 100,000 + 0 | 80,000円 |
| ③ 買って2年後に売る(iPhone想定) | 180,000 − 118,800 | 61,200円 |
| ④ 買って2年後に売る(Android想定) | 180,000 − 92,340 | 87,660円 |
今度はAndroid想定(④)に対しては返却プログラムが7,660円お得になり、iPhone想定(③)に対しては依然18,800円の負けという、きれいに割れた結果になります。
残価を1段階動かしただけで結論がひっくり返る。「返却プログラムは得か損か」という質問に一般解が存在しないのは、このためです。カタログの残価額と、自分の機種の中古相場。この2つを突き合わせる作業を飛ばすと、どちらに転んでいるのか永久にわかりません。
なお③④には「自分で売る手間」と「相場が変動するリスク」が含まれていない点は割り引いて考えてください。査定に出す、初期化する、配送する、相場が下がる前に動く——この手間を金額に換算していくらと見るかは人それぞれです。逆に返却プログラム側には「分割手数料が無料」「相場が下落しても残価は保証される」という、価格変動リスクをキャリアが負ってくれる価値があります。
得をする人・損をする人
条件を整理すると、こうなります。
得をしやすい人
- 2年ちょうどで機種を替えたい人。返却期限に自然に乗れる
- 同じキャリアを使い続ける人。最大22,000円の利用料が免除される
- 値持ちの悪い機種を選ぶ人。実売相場より高い残価を約束してもらえる可能性が高い
- 中古売却の手間をかけたくない人。返すだけで完結する
- 月々のキャッシュフローを抑えたい人。負担を23回に均せる
- 端末を丁寧に使える人。査定をクリアできる
損をしやすい人
- 他社への乗り換えを考えている人。最大22,000円が上乗せされ、しかもauの場合は新規契約・他社からの乗りかえ・番号移行で購入した端末には特典自体が適用されません
- 端末を3年以上使いたい人。返却しなければ残価が再分割され、結局は満額を払う
- 画面を割りやすい/水没させやすい人。補償未加入で破損状態だと22,000円の故障時利用料。補償加入なら2,200円です
- ハイエンドiPhoneを選ぶ人。自分で売ったほうが高くなりやすい
- 返却期限を管理できない人。ドコモは23か月目まで、auは13〜25か月目と条件が各社で違う
- 端末を改造・分解した人。「受付不可品」と判定されると回収されず、免除されるはずだった分割支払金と同額の違約金が発生します
最後の「壊れやすさ」は意外と効きます。22,000円と2,200円の差は10倍です。返却プログラムを使うなら、補償サービスへの加入はほぼセットで考えたほうが合理的で、その月額も実質負担に足して計算すべきコストになります。
損しないための5つのチェックポイント

契約の場で、次の5つだけは確認してください。店頭でも聞けば教えてもらえます。
- この機種の残価はいくらですか? 金額を必ず数字で聞く。「月々◯◯円」だけで判断しない
- 返却期限は何か月目から何か月目までですか? ドコモは23か月目まで、auは13〜25か月目と各社で違う
- この機種のプログラム利用料はいくらですか? 0円の機種も22,000円の機種もある
- 2年後に乗り換える可能性はあるか? あるなら利用料を最初から実質負担に足して比較する
- その機種の中古相場はいくらか? 買取比較サイトで「1〜2世代前の同じシリーズ」の現在価格を見れば、2年後のおおよその着地点が見えます
そして最後に、5番で調べた買取相場と1番の残価を並べて、冒頭の引き算をするだけです。
長く使うほど得になるという発想自体は、スマホに限らず有効です。手持ちのものを直して使い続ける選択肢も、一度は天秤に載せる価値があります(参考: カインズ自転車修理はできる?値段・時間・他店で購入したものは?)。家電の買い替え判断でも、スマホ連携のような「その後の使い勝手」まで含めて考えると結論が変わることがあります(参考: アイリスオーヤマ【スマホ連携】体組成計IBCM-B212の値段は?)。
制度そのものが、いま動いている
最後にひとつ。この残価設定というやり方には、行政からも目が向いています。
総務省は2026年4月20日の第6回検討会で「携帯電話端末の残価設定に対する各事業者の取組みの客観的考察と判断」を議題に取り上げ、残価設定のルール統一を検討しています。背景にあるのは、残価設定の設計次第で事業者間の競争が歪みかねないという懸念です。
これに対してApple社は、「顧客と企業間の意思決定自由度を侵害する不公正な扱い」として明確な異議を表明したと報じられています。
つまり、いま目の前にあるプログラムの条件は、数か月単位で変わりうるということです。2026年2月から3月にかけて3社が相次いで利用料を新設したのが、まさにその実例でした。「前に契約したときはこうだった」が通用しない領域なので、買い替えのたびに条件を読み直すのが結局いちばん安全です。
まとめ
- 2年返却プログラムはリースではなく、自動車の残価設定ローンと同じ構造。残価を決めるのはキャリア側
- キャリアが損しにくいのは、残価の設定権・認定中古品としての再販・出口課金・返却なしなら満額回収という4つの受け皿があるから
- 2026年2〜3月に3社が最大22,000円のプログラム利用料を新設。同じキャリアで買い替えれば免除される=乗り換えへの課金
- 損得の判定式は 「残価 > 2年後の実売買取額 + プログラム利用料」なら返却が得
- iPhoneの2年残価率は平均66.0%、Androidは51.3%。値持ちのいい機種ほど返却プログラムは不利になりやすい
- 破損時は補償未加入で22,000円、加入で2,200円。10倍の差があるので補償加入込みで計算する
- 総務省がルール統一を検討中で、条件は今後も変わりうる
「なんとなく月々が安いから」で選ぶと、2年後に乗り換えたくなったときに22,000円という思わぬ出費が出てきます。逆に、同じキャリアを使い続けるつもりで、値持ちの悪い機種を、期限どおりに、きれいなまま返せる人にとっては、素直に良い仕組みです。
得か損かは端末ではなく、あなたの使い方で決まる。 その判断材料として、この記事の引き算をぜひ一度やってみてください。
参考・出典
- いつでもカエドキプログラム | NTTドコモ
- スマホをおトクに購入できる「スマホトクするプログラム+」を提供開始 | KDDI ニュースルーム
- 「スマホトクするプログラム+」の特典を利用しない場合はどうなりますか? | au公式FAQ
- docomo Certified(ドコモ認定リユース品) | NTTドコモ
- いつでもカエドキプログラムは、機種が画面割れなど破損した状態でもプログラムを利用できますか? | ahamo
- 新たな端末購入プログラムは再び“縛り”を生むか? 3社の仕組みを紐解く | ケータイ Watch
- スマホの「残価設定」にメス? 総務省がルール統一を検討も、Appleは「不当な扱い」と猛反発 | ITmedia Mobile
- au・ドコモに返却手数料が導入!4キャリアの端末購入プログラムを新ルールで比較 | Selectra
- スマホの残価率を主要107機種で調べた|iPhoneは2年で何%残る?【2026年6月版】 | モバウル
- こんなに違う!中古iPhoneとAndroidスマホの買取価格の下がり方 | iPhone Mania
※本記事の金額・条件は2026年9月時点の公開情報にもとづきます。プログラムの内容は改定されることがあるため、契約前に必ず各社の公式ページでご確認ください。モデルケースの数値は仕組みを説明するための仮定であり、特定機種の実売価格ではありません。

